FUJINON LENS 4.0x f=6.4-25.6mm 1:1.8-4.9

 このタイトルはいったいどんなレンズなんだ,という感じですが,FujifilmのコンパクトカメラXQ2のレンズです。XQ2は2015年2月に発売された,たぶん富士フィルム最後のコンデジです。レンズ一体型カメラはその後もX70やX100シリーズ,XF10などが発売されていますが,いずれもAPS-Cサイズのセンサーを持つ高級機で,2/3インチの小さなセンサーの本来の意味でのコンデジは実質的にはXQ2が最後だっただろう,という意味です。

富士フィルムお得意のX-transセンサーを積んで小さいけどよく写る高級機,という位置付けで従来機種のXQ1の改良版として発売されました。小さいセンサーといってもコンデジ用センサーとしては大きめの1/1.7インチよりも微妙に大きいセンサーで,かつベイヤー配列ではない富士フィルムの独自設計のセンサーでした。また,広角端でライカ判換算25mm F1.8,望遠端で同100mm F4.9の4倍ズームは明るくてマクロモードでは3cmまで寄れる,という使い勝手の良さもウリで,個人的にはこのスペックはど真ん中に刺さるものでした。とてもコンパクトであるにもかかわらず,外装は質感もよく,プレミアムコンパクトを標榜するに恥ずかしくない仕上がりのコンデジでした。

このカメラ以前にはRicohのCaplio R1やPanasonicのLumix DMC-ZX1,Casio EX-H20Gなどを使っていました。EX-H20Gは世界中のいろいろなところに連れて行きましたが,GPS内蔵というのはお仕事用としてもたいへん便利なカメラでした。EX-H20Gが不具合がでるようになって買い換えようとしたら,既にコンデジのブームは過ぎ去ってほとんど新製品がなくなっていました。そのうえGPS搭載は一時的な流行だったらしく,GPSを搭載した機種も選択肢がありませんでした。

XQ2の性能も小さな高級機というコンセプトも個人的にはとてもグッとくるものがありました。それで中古を調達したのですが,やはりGPSが搭載されていないことは仕事用としてはとても不便であったこと,コンデジの主流が1インチセンサーに移って,かつ位置情報はスマホと連携する,という方向になったことから,XQ2は自分ではほとんど使わないままにカミさんと娘に貸与して,お仕事用カメラとしてCanon PowerShot G7 Xの初代機に乗り換えました。XQ2とG7XはXQ2のほうが少しだけ発売が遅いのですがほぼ同世代といってよいカメラです。XQ2のコンセプトには個人的には大いに共感したものですが,結局,シリーズとして生き残ったのはXQ2よりもさらに高価なG7Xであったことには商品企画の難しさを感じます。

1200万画素のX-transセンサーと富士フィルム独自のアルゴリズムによる色再現はコンデジであっても十分に発揮されていて,というか,それ以前の富士フィルムの技術が凝縮されたようなところがあって,濃い内容のカメラでした。XQ2はごちゃごちゃ言わずにjpeg撮って出しで気軽に使うべきカメラだと思います。

自分で撮ったカットが少ないので娘が出張に持っていったときのカットをいくつかもらってきました(このページのカットは全部娘が撮ったものです)。昼の風景はとても自然な色合いで写っています。

FUJIFILM XQ2
F4.2, 1/1100, ISO 100, WB (Red +0, Blue +0)
Apr. 10, 2018
水の都ヴェネチアです。色も自然で解像感もほどよく,ヨーロッパの街並みってこんなんだったよな,という記憶とよくあっています。
FUJIFILM XQ2
F5.0, 1/320, ISO 100, WB (Auto)
Apr. 10, 2018
上のカットと同じ船着場です。なんということもない画なのですが,雰囲気はでているとおもます。よく見ればハイライトの空は完璧に飛んでいるし,桟橋の裏側の影の部分はちゃんとつぶれていてダイナミックレンジがとても狭いことがわかります。小さな高画素センサーの限界を素直に示しています。1200万画素のセンサーというとSony α7Sが同じくらいの画素数ですが,α7Sはフルサイズセンサーなので余裕度が全然違います。比較する方が悪いと言われそうですが,α7Sの吐き出す画に慣れてしまうと,XQ2の苦手なところについつい目がいってしまいます。

FUJIFILM XQ2
F6.4, 1/800, ISO 200, WB (Auto)
Apr. 12, 2018
GPSがないので場所がどこかよくわかりませんが,たぶんフィレンツェです。歴史を感じさせる街並みを自然に切り出しています。美術館の中などで撮ったカットもあるのですが,薄暗いところではやはりこのカメラは相当に苦戦していました。やはりこういう明るいところで気軽に撮るのがよさそうです。

FUJIFILM XQ2
F3.6, 1/280, ISO 100, WB (Auto)
Apr. 12, 2018
これもたぶんフィレンツェです。いかにもなお土産やさんと観光客の波ですが,なんか妙に説得力があります。色がいい感じだからかもしれません。屋根の下の暗部はやはりつぶれていてかつ,空も飛んでいてダイナミックレンジが狭いことがわかります。しかし,お仕事のついでに持っていく旅行用カメラとしてこの小ささは捨てがたいものがあります。ただ,現在のスマホのカメラと比較して勝っているかといわれると,かなり厳しいものがありそうです。それがコンデジが淘汰された理由であることはもちろん理解しているのですが,このようなカメラの選択肢がなくなったことは,カメラ好きの一人として寂しいものがあります。

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