STAEBLE-LINEOGON 35mm F3.5 (その2)

Lineogon 35mm F3.5の続きです。BraunのPaxette IIのユーザー層はたぶんZeissやLeicaのような高級品には手が届かない人たちだったでしょうから(それでも十分に高価だったと思われます),Braunとしては廉価なレンズを提供することは重要なミッションのひとつだったはずです。

Paxette II用の交換レンズとしてはいちばん広角であったと考えられる35mmですが,いまでは標準ズームの焦点距離のなかに埋没しています。そのため35mmの単焦点レンズはよほど尖った特徴がなければ存在感がありません。しかし,Paxette IIの1950年代後半は35mmは立派な広角レンズとして認識されていたはずです。そのため,廉価に広角レンズを提供するうえで,トリプレット+前群1枚の4群4枚という簡単な構成としてそこそこ写る,という性能を目指したレンズがLineogonだったのでしょう。実際,ちゃんと写っています。

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / LINEOGON 1:3.5/35
35.0mm, F8.0, 1/125, ISO 1600 (-0.664EV)
Nov. 06, 2021, 16:04:42
F8まで絞ると四隅をのぞくと画面全体でおよそ均質に写ります。もちろん,現代のレンズとは比較になりませんが,人間がものを見るときは注目しているもの以外はぼんやりとしか認識していないのでこれはこれで差し支えがないのだと思います。太鼓橋もその水面の反射もそれらしく写っています。

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / LINEOGON 1:3.5/35
35.0mm, F8.0, 1/60, ISO 8000 (-0.664EV)
Nov. 06, 2021, 16:01:36
いつもは開放で撮って被写界深度を確認している構図ですが,開放で撮るようなレンズでもなかろうということで絞ってます。瓦に張り付いている泥や汚れもちゃんと解像しています。軒下の小屋組端部の飾りの凹凸もグラデーションでちゃんと表現されています。

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / LINEOGON 1:3.5/35
35.0mm, F8.0, 1/1000, ISO 320 (-0.664EV)
Nov. 07, 2021, 09:55:32
トンネルの入り口のレンガ風タイルは解像度は高くはありませんが,きちんと解像しています。フィルムだったらたぶんこんな感じにプリントされるだろう,という雰囲気です。ベルの入った塔は三角屋根の部分は銅葺き(たぶん),壁面はレンガ風タイルばりですが,それらの質感の違いまではさすがに表現できないようで同じ材質で作られたように写っています。もちろんカラーであればその違いは歴然とするのですが(全然違う色だから),トーンだけで質感表現をするのはモノクロ時代のレンズであってもよほどの実力がなければ難しいのでしょう。

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