smc PENTAX 135mm F2.5

Asahi Opt.  smc PENTAX 1:2.5 135mm
マウント:PK
焦点距離:135mm
開放F値:2.5
絞り羽根:8枚
レンズ構成:6群6枚
最短撮影距離:1.5m
フィルター径:58mm
質量:483g (実測値)

遠い昔には,カメラを買うとたいていの場合,標準レンズがついてきて,その後,広角や望遠を買う,というのが普通でした。広角はどちらかというとマニアむけで,一般には50mm標準レンズの次は105mmか135mmを買う人が多かったようです。当時の135mm単焦点レンズはF3.5か,明るくてF2.8が普通で,F2.5は大口径レンズの部類でした。

しかし,望遠ズームレンズの焦点距離が70mmから200mmをカバーするようになったうえに,大口径の望遠ズームで開放F値が2.8のものが出現すると,中望遠の単焦点レンズはズームレンズに飲み込まれてしまいます。ズームレンズの開放F値と大きな違いがない135mmや200mmの単焦点レンズはあっという間に人気がなくなってしまいました。一方でポートレート用ということで中望遠の単焦点レンズは大口径の85mm F1.4に人気がでてきたようです。

旭光学の135mmはM42マウントのTakumar時代から大口径F2.5のレンズがラインナップされていました。M42からKマウントへ移行した際に,マウントだけ変えてTakumar時代のものが引き継がれて1975年にKマウント版135mm F2.5が登場しています。Kマウントのごく初期にはsuper multi coatedを意味するsmcを大文字で表記していたようで,135mmレンズの銘板にも「SMC PENTAX 1:2.5/135」と刻印されていました。これが前期型です。

その後,SMCをsmcと表記するようになって銘板の刻印も「smc PENTAX 1:2.5 135mm」となった後期型が1977年に登場します。焦点距離の表記にmmがつくようになっています。光学系は前期型も後期型も6群6枚で,レンズ構成に変化はありません。各エレメント(レンズ)の形状は微妙に変わっているのかもしれませんが細かいことはわかりません。大口径中望遠レンズとはいえ公称で500gあり,かなり大柄なレンズです。

ズームレンズの台頭とともに135mmの人気がなくなっていったこととたぶん無関係ではないと思いますが,これ以降に旭光学から登場したMFの135mmレンズは同世代の初代KマウントのF3.5,smc PENTAX-MのF3.5,smc PENTAX-AのF2.8,そして,とてもレアで高価なsmc PENTAX-A*のF1.8です。AF時代にはいると135mmの凋落ぶりがはっきりしてきてsmc PENTAX-FAのF2.8が残るのみとなっていましたがそれもいつのまにかカタログから落ちてしまいます。

このレンズに関する駄文はこちら

手持ちの個体は銘板の刻印から後期型です。以下は久しぶりに(たぶん20年ぶりくらいで)持ち出したPENTAX LXにつけてKodak ColorPlus 200で撮ったものです。

手元のLXは電子式シャッターの動作がおかしくて絞り優先では正しいシャッター速度になりません。このLXはたぶん初期型で,2000年頃にメンテナンスに出した時点で既に電子部品がなくて修理ができなくなっていました。しかし,マニュアル露出にすると全てのシャッター速度ではないにしても機械式シャッターとして動作するため内蔵露出計をたよりにマニュアルで撮ることができます。露出計は生きていて単体の露出計と比較しても真っ当な値を示すので,ネガフィルムであれば問題なく撮影できます。20年ぶりに引っ張り出したと云っても慣れた操作で勝手に体が動くので特に困ったことにもならず普通に撮影できました。

デジタイズには現像の際に富士フィルムのフジカラーCDへの書き込みサービスを利用しました。フジカラーCDは画素数が200万画素しかなくてかなり少ないのがイマイチで,ときどき,色補正がおかしいこともあるのですが,お手軽なので昔よくやったL版の同時プリントの感覚で依頼できて便利です。昔のPhotoCDと違って,専用の画像形式ではなく,普通にJPEGでCDに保存されているだけなので使い勝手も良好です。

PENTAX LX / smc PENTAX 1:2.5 135mm
135.0mm, F2.5, 1/2000, ISO 200, Kodak ColorPlus 200
Oct. 23, 2021

ハス田です。開放ですが,L版プリントくらいなら何の問題もなさそうですが,200万画素くらいでも等倍でみると甘いことがよくわかります。しかし,フィルムのザラザラ感もあるのでレンズの解像度がどうこうというような話はできそうにありません。ハスの葉の質感がどこか人工的な感じがするのはデジタイズの過程によるものなのか,レンズの個性なのかもわかりません。さすがに開放では被写界深度は浅く,前後が大きくボケます。背後のボケはちょっとざわざわしています。

PENTAX LX / smc PENTAX 1:2.5 135mm
135.0mm, F4.0, 1/125, ISO 200, Kodak ColorPlus 200
Oct. 23, 2021
1段ほど絞るとずいぶんとスッキリします。どこにピントをおいたのかイマイチわからない画ですが,それは写し手の技術の問題です。LXのファインダーは2000年に登場したLX2000のスクリーンに交換しているので旭光学のMFカメラのファインダーのなかではもっともピントを掴みやすいファインダーのはずですから,どう考えても撮影技術の問題です。1段絞っても実はまだ甘いのですが,この柔らかさはとてもいい感じです。画素数が少ないからかもしれませんがフリンジもまったくわかりません。

PENTAX LX / smc PENTAX 1:2.5 135mm
135.0mm, F4.8, 1/125, ISO 200, Kodak ColorPlus 200
Oct. 23, 2021
視野率100%のLXのファインダーを信じてフレーミングしたものの,微妙に下が切れてしまいました。本当はボートの喫水まで入れたつもりだったのです。橋の下のハイライトが完全に飛んでますが,これはフィルムのラチチュードの限界だったからでしょう。もうすこし,アンダーで撮るべきでした。しかし,そうすると今度は暗部が潰れてしまいます。最近のデジタルカメラのセンサーであればこの程度の明暗差は楽勝だと思われます。この20年の間にいかにデジタルが進歩したか,考えさせてくれます。この画も少し絞っているのでスッキリした感じがします。

PENTAX LX / smc PENTAX 1:2.5 135mm
135.0mm, F4.0, 1/500, ISO 200, Kodak ColorPlus 200
Oct. 23, 2021
後ろの点光源が見事に絞りの開口部の形になっています。手前の池の反射では大きなハレーションがでていますし場所によっては光芒がでていてちょっと幻想的な感じになっています。ある種,古典的な写りでなんだか懐かしい気分になります。

PENTAX LX / smc PENTAX 1:2.5 135mm
135.0mm, F2.5, 1/500, ISO 200, Kodak ColorPlus 200
Oct. 23, 2021
これがフィルムの最後のコマでした。最後はやっぱり開放で,と思ってちょっと気合をいれました。10月の終わりなのですが,まだ,かき氷の暖簾がぶら下がっていて,それがちょっと強い風で不規則にゆれていました。氷の文字がよく見えるように暖簾が広がって,かつ,秋っぽい服装の人が通るタイミングをはかってシャッターを切りました。デジタルだったら,何も考えずに連写すればそのなかに偶然うまい画が残っていたりするので簡単ですが,そもそも手動巻き上げのフィルムカメラではそんなことはできません。それにみみっちぃ話ですが,今,手に入るフィルムは高価ですから昔のように湯水のようにフィルムを消費する根性は私にはありません。というわけで一写入魂,自ずと気合がはいります。少し離れているので開放でも被写界深度は多少深いということもあって,なんとか狙い通りにピントも来ていると思います。個人的にはこの画は気に入っていたりします。こんなに頑張らなくてもデジタルカメラでAFレンズを使えば簡単に撮れそうではあるのですが,写真は自己満足なのでこれでよいのです。

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