HEXANON AR 57mm F1.2 (その19)

長らく連載(?)してきたHexanon AR 57mm F1.2も今回でひとまず終了です。どんなレンズか,というのを総括するのは難しいですが,ひなたよりも日陰,昼よりも夜が得意なレンズであるように思います。そのうえで独特の空気感,空気が実際よりも少し粘り気を持って写し撮られるようなところがあると感じることが少なからずあります。もちろん,いつもそうだ,というわけではなくて,それを再現する方法がよくわからず,ごく当たり前に写ることももちろんしばしばです。どこかで何かが噛み合うと独特の画を吐き出す,という感じです。

解像感を求めるなら大きく重い大口径の古いレンズを持ち歩く必要なんてまったくないわけで,小口径のデジタルカメラ用のイマドキのレンズを使えば事足ります。それとはまったく違う,レタッチでは表現できない「何か」の空気を写し止めることができることにこのレンズの価値があるのだと思います。

ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2
57.0mm, F1.2, 1/500, ISO 100 (+0.3EV), WB (Auto)
Jan. 22, 2022, 09:51:02
どうしてハイライトにピントをあわさないんだぁ,って叫びたくなるような中途半端な位置にピントをあわせています。一応,画面中央近くに狙った落ち葉があって,それは開放にもかかわらずシャープに写っています。中央部の解像度は開放でも十分にある,ということだと思います。それよりも,この日陰の雰囲気はこのレンズならでは,のような気がします。ちょっと重くねっとりした不思議な空気感です。というか,私にはそのように感じられる,ということで。

ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2
57.0mm, F1.8, 1/2500, ISO 100 (+0.3EV), WB (Auto)
May 06, 2022, 08:28:16

あからさまに手前の枝の前ボケが邪魔,という失敗構図です。葉を透過する光を狙っていて,それはある程度成功していて,初夏の爽やかなイメージが出ているように見えます。しかし,背後の山の日陰部分はやはりどこか重苦しい空気が漂っているように感じます。これって,私の思い込みかなぁ?

ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2
57.0mm, F2.0, 1/8000, ISO 100, WB (Auto)
Feb. 06, 2022, 10:36:47
右側に少し写っている竹の影です。ぼたん園の壁に写っているただの影です。少し絞っていますが,被写界深度が浅いため,影も壁といっしょにとろけ始めているところがあります。実際には影は壁に張り付いていてカリッとしているのですが,ボケのせいでリアルの世界で目で見るものとは少し違う画になりました。ボケのために,影の輪郭がゆるくなっていて,平面の壁なのになんとなく画に奥行き感を与えているようにも思います。

ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2
57.0mm, F2.0, 1/60, ISO 1000 (+0.3EV), WB (Auto)
Feb. 18, 2022, 20:19:09
最後は夜景です。少し絞っていますが,シャッタースピードが1/60なのに,微妙に手ブレしているようです。しかし,等倍でみなければわからない(気がつかない)と思います。イルミネーションはきれいにボケてシャボン玉ぼけになっています。こういうシチュエーションでは,なんでもないものでもなんだかもっともらしく見せてしまう,というのがこのレンズの力のひとつである,というのを総括としたいと思います。

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