Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8 (Contarex)

Carl Zeiss Distagon 1:2.8 f=25mm

マウント:Contarex
焦点距離:25mm
開放F値:2.8
絞り羽根:6枚
レンズ構成:7群8枚
最短撮影距離:0.17m
最大撮影倍率:
フィルター径:49mm
質量:448.5g (実測値)

Contarex用の広角レンズです。Contarex用レンズは主な焦点距離において明るい(F値が小さい)ラインと暗いラインの二本立てになっていました。明るいレンズとしてDistagon 35mm F2, Planar 55mm F1.4, Planar 85mm F1.4, Sonnar 135mm F2.8がラインナップされ,暗いレンズとしてDistagon 35mm F4, Planar 50mm F2, Sonnar 85mm F2, Sonnar 135mm F4というラインナップでした。しかし,これらのレンズよりも広角または望遠側のレンズについてはさすがに需要が少ないということもあってか1つの焦点距離に対して1つのF値というラインナップでした。

レンジファインダーのContax用のレンズでは広角は(おおよそ)対称型のBiogonでした。しかし,一眼レフでは長いバックフォーカスが必要となるため,Contarexではレトロフォーカス型のDistagonがラインナップされていました。現在では標準ズームの広角端にすぎない25mmもContarexが登場した1960年代は超広角レンズという扱いでした。また,Carl ZeissのレンズはBiogonの時代から超広角は24mmではなく25mmという焦点距離のレンズをラインナップしていて,それは現在まで続いています。NikonやCanonもレンジファインダーカメラの時代には25mmをラインナップしていましたが一眼レフの時代には24mmになっています。

Contarex用の(当時としては)超広角レンズであるDistagon 25mmはかなり特殊な位置づけと認識されていたのか,明るさ(開放F値)は1種類だけで中庸を狙ったF2.8のものが1963年にリリースされています。前期のクローム鏡筒のものと,後期の黒鏡筒のものがあり,Wikipediaによると両者をあわせて6,630本生産されたということです。Zeissが自前のカメラ事業から1971年に撤退したのちに,ヤシカと提携してContaxを復活させ,Contax/YashicaマウントでDistagon 25mm F2.8は復活しますが,レンズ構成はContarex時代のものを踏襲したということを言っている人もいますが,実際にどうなのかは私にはわかりません。

手元の個体はクローム鏡筒の前期型で,最短撮影距離17cmで広角マクロ的に使える近接能力をもっています。寄れる,ということは撮影の幅が広がるということで使い勝手がよいと言えます。入手時は外観は傷だらけであまり丁寧な扱いをうけていなかったように見えます。そこで,いつもお願いしている某マエストロにメンテナンスをしてもらいました。毎度のことながら色々と問題があった個体でしたが,それらの問題はほぼ100%クリアしていただきました。,無限遠の調整もたいへん困難であったということでした。結果としてかなりオーバーインフなのですが,しかし,最短撮影距離が短いために,距離環の回転角が非常に大きく,無限遠合焦までに十分にヘリコイド をまわせるため,実用上の問題はまったくありません。

Leica Mアダプタ+Sony Eアダプタを使ってSony Eマウントカメラに装着して春の富士山を見に行ってきました。以下,Distagon 25mm F2.8 + ILCE-7sでjpeg撮って出しです。

ILCE-7S / Distagon 1:2.8 f=25mm
25.0mm, F8.0, 1/400, ISO 100, WB (Auto)
Apr. 10, 2023, 10:38:57
前回のDistagon 35mm F4と同じ構図からです。でもって,いきなりの怒涛の周辺光量落ちです。手元のメモではF8まで絞っているはずですがまるで開放か?ってくらいの落ちっぷりです。富士山にピントを合わせていますが,甘いかといわれれば甘いですが,この時代の超広角レンズとしてはとても頑張っているように思います。このレンズが登場した時代の雰囲気として,ボケを活かしてどうこう,なんていう発想はなかったでしょうから,天気がよければガッツリ絞って使うことが想定されていたに違いありません。といっても,手前のススキのボケ方はほどよいバランスであるように見えます。さすがはZeissです。

ILCE-7S / Distagon 1:2.8 f=25mm
25.0mm, F8.0, 1/160, ISO 100 (+1EV), WB (Auto)
Apr. 10, 2023, 10:50:25
寄れるなら寄ってみせよう,ってわけで寄りました。でもF8まで絞ってます。怖くて開放なんてできません,というか,絞らないと富士山が富士山だとわからなくなるだろう,と思って絞りました。さすがにピント面はシャープです。ちょっと逆光気味のためか,ハレーションが見られる,というか,コントラストがかなり落ちています。時代を考えれば当然ですが,逆光耐性は現代のレンズとは比較にならないレベルで相当残念な感じです。それでもPlanar 50mm F2よりは逆光耐性はベターな気がします。こういうカットならべつにDistagon 25mmじゃなくても撮れるでしょ,って言われそうですが,いろいろな意味で難易度が高いレンズかも。

ILCE-7S / Distagon 1:2.8 f=25mm
25.0mm, F8.0, 1/400, ISO 100 (-0.7EV), WB (Auto)
Apr. 10, 2023, 10:51:36
夏になったら貸しボートをするような場所です。ピントは手前の桜に合わせたはずですが,どこにピントが来ているかわかりません。F8まで絞っていますが背景の富士山は意外にボケてます。相変わらずの周辺光量落ちです。

ILCE-7S / Distagon 1:2.8 f=25mm
25.0mm, F8.0, 1/60, ISO 100 (+0.7EV), WB (Auto)
Apr. 10, 2023, 13:21:15
広角っぽい画を狙ってみました。逆光ぎみなためかコントラストが落ちています。ピントがどこに来ているのかよくわかりませんが,真ん中あたりの花にきているようです。広角で絞っているにもかかわらず,なぜか被写界深度は薄い印象です。ちゃんと絞れてないんじゃないか,あるいはメモを間違えたか,ちょっと心配になってきます。しかし,周辺までそれなりに安定しているのでちゃんと絞ったんだろう,と思います。

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