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Contax Carl Zeiss Hologon 8/16 T*
マウント:Contax G (Leica M改)
焦点距離:16mm
開放F値:8
絞り羽根:なし
レンズ構成:3群5枚
最短撮影距離:0.3m
最大撮影倍率:???倍
フィルター径:専用
質量:120g (カタログ値)
Hologon T* 16mm F8は1994年に突如として(?)彗星の如く登場したContax G1とともに発表されたレンズです。
AFレンジファインダーカメラという新しいコンセプトで登場したG1は確かにセンセーショナルだったのですが,ファインダーを見ていてもピントがあっているのかあっていないのかを判断する術がありませんでした。もちろん合焦表示はでますが,距離計に連動する二重像や,一眼レフのファインダーのように本当にピントがあっている,ということを確認できないのです。高級なレンズ交換式のカメラであるにもかかわらず,ピント合わせの成否の確認という点に限って言えば,安物のコンパクトカメラ(当時は全てがフィルムカメラでした)とたいして違いがない,というものでした。
しかし,レンズのラインナップはとても魅力的で,Contaxマウントの一眼レフカメラの交換レンズのなかでは比較的リーズナブルだったPlanar 50mm F1.4よりもずっとお手軽にPlanar 45mmが使える,ということでContax G1を買いそうになったことは2度や3度ではありませんでした。そうこうするうちに1996年には新型のG2が発表され,交換レンズも追加されて物欲を抑えることが困難になってきましたが,フォーカスがどこにきているかがわからないファインダーはどうしても受け入れることができず,手を出さずに踏みとどまっていました。
G2は10年近く販売されて,2005年には京セラがカメラ事業から撤退するという事態に至り,G2の後継機が出ないまま,Contax Gシリーズもディスコンになりました。
Contax GシリーズのカメラはAFレンジファインダーを標榜しているだけあって,マウントのフランジバックは非常に短いうえに,バックフォーカスはもっと短くても問題のない仕様でした。したがって一眼レフカメラではどうしたって実現できないbiogonのような対象型の超広角〜広角レンズがオリジナルにかなり近いレンズ構成でラインナップされていました。
当時の私は不明にしてContax Gシリーズにおいて最も重要ポイントであったはずのレンズ構成にはまったく無頓着でそれを魅力だと認識していませんでした。しかし,ミラーレス一眼カメラでオールドレンズ遊びにハマっていくなかで,オリジナルのContax C (Contaxレンジファインダーカメラ用マウント)のレンズを入手して1950〜1960年代のZeissレンズに魅了されるようになって以来,遅ればせながらContax Gマウントレンズにも改めて目をむけるようになりました。
結果として,今頃になってContax Gシリーズ用の単焦点レンズを物色する,ということになりました。そのような流れで入手したのがHologon 16mm F8でした。
ようやくここからがHologonの本題です。
Contax GシリーズのレンズはBiogonの21mm, 28mm, Planarの35mm, 45mm, Sonnerの90mmという5本の単焦点レンズと35-70mmのズームレンズが用意されてこれらは全て日本製でした。おそらく京セラというか旧ヤシカというか旧富岡光学製だったのだろうと妄想します。これら6本のレンズ以外に,Gシリーズの登場時からラインナップされていたのがHologon 16mm F8でした。Hologonのみがドイツ製で,おそらくZeiss本体の製造によるものだったと思われます。ZeissはHologonの復活に強い意欲を示していた,という説もあります。
WikipediaによるとHologonの発売時(1994年)の希望小売価格は28万円だったようで,Zeissのレンズとしては比較的リーズナブルな価格であったGシリーズにあってダントツの高級レンズでした。
Hologonは最初はレンズ交換式のContarexカメラに15mm F8の超広角レンズを固定した「ツァイス・イコン・ホロゴン・ウルトラワイド 」というカメラとともに1968年に登場します。その後1972年にLeica Mマウント用の交換レンズとしてHologonはごく少数(400本くらい?)製造されたようですが,滅多に見かけることはありませんし,あっても普通に100万円超の価格で取引されています。2024年9月に松屋銀座で開催された世界の中古カメラ市ではじめて実物を見ましたが,200万円以上の値が付いていました。
Contax Gマウントで復活したHologonは登場時にはずいぶんと話題になったように記憶しています。しかし,その価格から自分には無縁だと思っていました。2002年頃にはモニターキャンペーンと称してBiogon 21mmやHologon 16mmが希望小売価格の1/4ほどで投げ売りをされていたようです。京セラのカメラ事業撤退に向けての在庫一掃セールだったというもっぱらの噂ですが実際のところはわかりません。新品のHologonが7万円くらいだったというのは驚きの価格です。
ただ,これにも真偽不明の都市伝説があるようで,シリアル番号が812xxxx番台あたりの個体がモニターキャンペーンで投げ売りされていて,投げ売り対象の個体は実はデキが悪い個体だという怪しげな話です。ちなみに,私の手元にある個体はまさにその投げ売りバージョンと噂される812万番台の個体です。
Contax G用のHologonは3群5枚構成で前玉は大きな半球,後玉は小さな半球形状で絞りはなくF8固定です。超広角レンズも標準レンズと同様に最初は対称型レンズからはじまり,Biogonタイプを改良というか洗練・単純化をしてHologonになったという考え方もあるようです。Zeissの超広角対称型レンズといえば私のなかではBiogonよりもTopogonのほうがしっくり来ます。別に何かの根拠があるわけではありませんが,HologonはTopogonの改良型なのではないか,と個人的には考えています。だからどうだってことはないのですが。
Hologonはバックフォーカスが極端に短く特殊な形状であるため,Contax Gマウント用のマウントアダプタではミラーレス一眼カメラに取り付けることができません。Leica Mマウントに改造して使うのがお作法です。Leica Mマウントへの改造をやってくれるところはいくつかあるようですが,台湾あたりで開発されたらしいマウントをごっそり入れ替えるキットを調達して自分でマウントを交換するのが安上がりで簡単です。かつては3万円くらいでしたが,円安もあって値段が高騰しています。eBayでは香港から発送されるものが見つかることが多いように思います。アメリカから送られるものや台湾から送られるものもありますが,ブツは同じものだと思います。Hologonを使ってContax G1/G2以外のカメラで撮影するためには絶対に必要ですので,ヤフオクで未使用品がでているときにすかさずゲットしました。マウントの交換は簡単でネジを3本はずすだけです。Made in Germanyを刻印されたマウントを取り外すのはちょっと残念ですが,いつでももとに戻せるので気楽に試すことができます。
Leica Mマウントに改造したHologonをSonyのαシリーズで使うにはLeica MマウントをSony Eマウントに変換するアダプタを介して当然のように装着できますが,Hologonの後玉の保護用ガードがシャッター幕と干渉してシャッター幕が壊れる危険があります。レンズを上向きにしているときは干渉しないけどレンズを下向きにすると干渉する,という本当にごくわずかのシャッター幕のたわみによって干渉したりしなかったりするというギリギリぶりです。したがってSony αで使う時は電子シャッターで撮影する,が基本です。
私はSony αに装着するのが怖かったので,Leica M Monochrom Typ 246に装着して撮影してみました(これも怖かったけど)。最初のカットも含めて今回と次回は八ヶ岳の麓のハイジの村へ行った時のカットです。ちょうどチューリップが見頃でした。
全てLeica M Monochrome Type 246 + Hologon G 16mm F8でjpeg撮って出しです。
Hologonの特徴は,超広角にもかかわらず歪曲がない一方で周辺光量落ちが非常に大きい,ということです。フィルムカメラの時代はあまり問題になりませんでしたが,デジタルカメラになってからは光がセンサーに正面から入射しないと感度が悪くなるという特性によってバックフォーカスが短いレンズはデジタル一眼での撮影には周辺の色被りなどが問題になるようになりました。Leica M246はモノクロセンサーなので,色被りは本質的にありませんが,このカットのように周辺が大幅に落ちているのはレンズ本来の周辺光量落ちに加えてテレセントリック性が満足されないことによるセンサーの感度低下が原因だと思われます。いくらなんでも落ちすぎです...。
LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / Hologon 8/16 T* 16.0mm, F8.0, 1/180, ISO 500 Apr. 13, 2024, 12:35:04 |
LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / Hologon 8/16 T* 16.0mm, F8.0, 1/250, ISO 320 Apr. 13, 2024, 12:26:30 |
ピントがきているチューリップの花や葉はとてもリアルな質感表現です。解像感も十分にあると思います。周辺光量落ちが激しいのでAEによる露出もなんだか安定しません。それはそれで面白いのですが。やっぱり,どこか現実感のない不思議な画になります。こういう画ばかりみているとちょっと疲れてくるような気もします。
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