Carl Zeiss Sonnar 50mm F2 (その2)

スチル写真(Contax)用に1931年にかの有名なベルテレによって設計された最初のSonnarは50mm F2でした。ここで使っているレンズはベルテレの最初の写真用Sonnarを源流に持つSonnarの原点といってよいと思います。

コントラストがあまり強くなくて眠く見える,というようなことを先に書きましたが,モノクロフィルム時代,特に戦後しばらくの間は写真を撮る人は現像もプリントも自分でするのが普通だったと想像されます。そのため,現象やプリントの過程で自分の好みや意図に合うように調子を整えていたと考えられます。そのような過程を経る,という前提で考えれば,レンズがあまり主張せず,調整がしやすい写りのほうが便利であったはずです。

私自身は,カラーフィルム世代なので,モノクロフィルムの現像をした経験はありません。しかし,Sonnarのモノクロ画像を見て,これは自分でトーンを整えることが前提なのではないか,と考えました。そこで,デジタルでの撮影は普段はjpeg撮って出しなのですが,試しにレベルやトーンカーブを調整してみました。

以下のカットは左がjpeg撮って出し,右が少しだけ調整したものです。デジタルではやり直しがいくらでもできるし,大胆な調整も可能ですがそんなに大胆な調整は不要で(当たり前か...),ごくわずかな調整で意図にあわせることができると感じました。コントラストが弱めなので,ほんの少しだけトーンカーブをS字型にするだけでほどよいコントラストが得られます。

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / Sonnar 1:2 f=50mm
F16.0, 1/90, ISO 320 (-0.3EV)
Aug. 01, 2020
左右でたいした違いはないともいえますが,手前の道路並木の幹にうつる木漏れ日(というか,影)を強調したかったので少しだけ暗部を持ち上げています。それだけで見違えるようにパリッとした絵になっています。シャープネスは無調整ですが,よりシャープな印象です。フィルムであれば,このような調整はプリントのときに出来そうに思えます(やったことがないからわからないけど)。

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / Sonnar 1:2 f=50mm
F16.0, 1/125, ISO 320
Aug. 01, 2020
ビルの窓全面に映る青空と夏の雲です。左のjpeg撮って出しのままだとなんだか眠いだけで何が言いたいのかあまりわかりません。右はレベルを調整してレンジを拡大して(薄めるともいいますが)からトーンカーブの明部を少しだけ持ち上げています。当たり前ですが雲が白くなって夏っぽくなりました。デジタルって便利だなぁ,と思います。

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) / Sonnar 1:2 f=50mm
F16.0, 1/60, ISO 8000
Aug. 02, 2020
木漏れ日の陰影がおもしろいと思ったカットです。左のjpeg撮って出しでも悪くないと思いますが,少しだけ暗部を持ち上げた右の方がメリハリがあって分かりやすくなっています。単純バカっぽいとも言えますが,このくらいの調整はやってもいいかな,とも思います。

jpeg撮って出しでも決して悪くはないですが,ちょっとだけ調整するだけでモノクロ写真は表情が変わって面白い,と思います。カラーだと触るところがたくさんあってバランスが難しくなかなか手がだせませんが,モノクロの世界は輝度だけなのでいろいろ楽しめそうです。

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