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久しぶりのHexanon AR 57mm F1.2です。
前回(その4)までは,無限遠が出ないという致命的にダメな状態だったのですが,その後,某マエストロにメンテナンス(オーバーホール)をお願いしました。その結果,6群7枚のレンズ構成のうち,5群と6群のレンズが入れ替わって格納されていたことが原因だったことがわかりました。
マエストロによると,一般に流布しているこのレンズの6群はフィル側が平板の平凸レンズということになっているが,フィルム側はゆるい凸で両凸レンズであって,しかも5群が平凸レンズであったために,以前にメンテナンスをした人が5群と6群を間違って装着したのではないか,ということでした。さすがに,これは普通,疑わないところなので,丸一日はまったということでしたが,逆に1日でよく解決できたものだ,とさすがのマエストロの技に感銘をうけた次第です。
このレンズはヤフオクで調達しましたが,出品者は気がついていて知らないふりをしていたのか,それともただ何も考えずに転売しているだけなのか,よくわかりませんが,ヤフオクで調達するときは気をつけねばならない,ということを改めて認識した次第です。もっとも第5群と第6群が入れ替わっていることをどのように気をつけたらわかるのか,まったくわかりませんが。
自分ではトリウムレンズのブラウニングはそれほど進行していない,あるいはあわよくばトリウムが含有されていないバージョンか,と思っていましたが,ちゃんと重症でした。メンテナンスの際にUV光の照射で改善してもらって,透明になりました。そうすると,前玉表面側のコーティングの劣化が顕在化して,曇っていることが明確にわかる,というちょっと残念なことになりました。私の節穴のような目ではあまり気にしない方向です。逆光などではコントラストが低下するのだと思いますが(実際,かなり低下します。もともとそういう性能のものだったのか,コーティングの劣化によるものなのか区別できません),
しかもよくわからない削りがあったりして,異なるバージョンのパーツを流用して無理やり組み込んだのではないか,というような部分もあって,満身創痍な個体でした。
マエストロのおかげで結果として,コーティングの劣化以外は問題ない状態になったのですが,こんなオーバーホールは他の人にはとてもできないだろうと思います。
以降は,メンテナンス後の個体によるカットで,Sony α7S + HEXANON AR 57mm F1.2でjpeg撮って出しです。
ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2 57.0mm, F1.2, 1/8000, ISO 100 (-1EV), WB (Auto) Jan. 22, 2022, 09:31:37 |
まずはハルちゃんです。開放ですが甘いのではなくて単なるピンぼけです。ピントは目ではなく頭の毛に来ています。ピント面はそれなりに解像感があります。でもカリカリの解像か,と言われればそうではありません。よーく見ると,頭の毛のハイライトにはカラーフリンジが見えますが,普通に見る分にはまったく気になりません。この時代のレンズ(1970年発売)として,色収差の補正はとても優秀だと思われます。コーティングの劣化のためか,強い日差しのもとでコントラストが落ちているようですし,前足の前にゴーストが出ています。
ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2 57.0mm, F1.4, 1/8000, ISO 100 (-1EV), WB (Auto) Jan. 22, 2022, 09:35:27 |
1/3段,F1.4まで絞り環のクリック1個分だけ絞っていますが描写傾向は開放とあまり違いはありません。いつものことですが,このカットもピンボケです。ピントはやはり頭の毛に来ています。毛の1本1本が解像しているわけではなく,甘いのですが,画として全体を見るとなんとなく解像感があります。さすがマエストロの調整のおかげです。中央上にゴーストが見えます。
ILCE-7S / HEXANON AR 57mm F1.2 57.0mm, F2.4, 1/4000, ISO 100 (+0.3EV), WB (Auto) Jan. 22, 2022, 09:40:52 |
しかし,この57mm F1.2が時々見せる,妙に粘性の高い描写は他のレンズにはないように思います。どこか空気が粘って重苦しいような不思議な感覚です。これを線が太いと云うのかどうか,私にはわかりませんし,たんなるコーティング劣化によるコントラストの低下がそのように感じさせるのかもしれません。周辺の光量落ちによって視線が中央に導かれること,トリウムによるブラウニングは十分に改善されているにもかかわらず少し黄色に偏った色合いであること,などいろいろなっ要因が重なっているのでしょう。このレンズにはこのレンズにしかない独特の雰囲気がありそうです。
次回以降,およそ15回(1ヶ月半くらい)にわたって(途中で他のレンズが割り込むかもしれませんが),マエストロの手によって復活なった「コニカ渾身の大口径標準レンズ」の本来の写り(に近い画(?)を並べていく予定です。
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